uncle_pohの音楽覚書

音楽に関して考えたこと、感じたことを書きます

スズキ-チェロ教本感想:7巻

 前回の記事の続き。

スズキ7巻

 エックレスのソナタ、バッハの無伴奏3番からブーレ、そしてなんとポッパーのガヴォット、最後にパラディスのシシリエンヌ。協奏曲が多かった6巻に比べ、素敵な小品が多く感じる。

  •  エックレス-ソナタ 11番ト短調 :1楽章 Largo

     久々にスズキのヴァイオリンと同じ曲。ヴァイオリンは8巻に4楽章まで載っているがこちらは2楽章まで。4楽章はIMSLPでちらっと見たところ、親指ポジションを多用するPrestoで、このレベルでは難しすぎるため割愛されたと推測。

     作曲家については英語Wikiより:Henry Eccles - Wikipedia
     (概要)ヘンリー・エックレス(1670–1742) 英国の作曲家でヴァイオリニスト。1720年に12のヴァイオリン・ソナタを出版、しかし1,4,8,9番はジュゼッペ・ヴァレンティーニのソナタから借用(パクリ?)している。一番有名な11番の2楽章は、フランチェスコ・ボンポルティの作品10から第2楽章(クーラント)を抜粋したもの。

     衝撃。2楽章好きなのに他人からの借用かい!1,3,4楽章は自身の作品らしい。このWikiの記述には参考文献がありそうだが、それを自分でたどる気にはなれない…ので、他人からの盗用って説もあるんだな、くらいに覚えておこう。昔ほど盗用や借用がある印象。バッハは自分の他の曲から流用していたな、それは全く問題ないと思うんだけど。良くも悪くもおおらかな時代だった…のかなぁ。

     曲は、バロック時代のソナタらしく(緩ー急ー緩ー急)の形で、1楽章はLargo。いきなり6ポジションから始まる。マルチェロ、ヴィヴァルディのソナタでも書いたが、こういうゆっくりした曲は音程が目立つ。この曲に取り組んだ時はまだ7,8ポジションにそこまで慣れていなかったので、音程に気をつけるだけで終わってしまったが、本来であればもっと情感を引き出せる曲のはず。
     M.2-3でレ→ラに飛ぶのを確実に。次の3、4小節目のソ→ド#→ファも。あとは同音で指換えが多いので、そこまで変な音にならないはず…と思うが、この同音指換えも結構難しいので注意。少しでも高くなったりすると、聴いている方は一発で分かる。
     M.6(M.15も)のトリルはゆっくりな曲はゆっくりと。これは先生によっても教え方違いそう。
     M.8から後半。低ポジションの拡張(シ♭)が厳しいけど頑張る。
     M.12から最後の盛り上がり。M.14のレまで、M.12のシ♭、M.13のドをちゃんと当てて、しっかりと盛り上げる。クレッシェンド書いていないけど、M.8からM.14までずっとmfのままはありえないので、自分なりに抑揚をつけて。
     M.15(2括弧)のritはやりすぎないように。

    当時の演奏:

     

  •  エックレス-ソナタ 11番ト短調 :2楽章 Allegro con spirito

     短調で速い、私が好きな感じの曲。とにかく全体的に跳躍が多い印象。でも弾けたらかっこいい。
     1楽章も2楽章も繰り返しがあり、繰り返しで何かしら変えないとつまらない、と教えられた。同じ音でも弾く弦を変えるとか、強弱とか、ビブラートのかけ具合を変えるとか。

     M.1、いきなりfの重音から始まる。M.2の最後、レからオクターブ上のラへの跳躍だが、レが開放なのでちゃんと準備して2で当てる。M.3最後のソ→ドの跳躍の方が難しいかも。
     M.5からM.1をピアノで繰り返し。
     M.9から難所、前半の終わりのM.19までほぼ8分と16分音符で、跳躍も多い。M.16ではD線で上のレを取る、この段階では珍しい指。
     M.20でレシ♭ファの重音、丁度ネックのところなのでシ♭ファの重音が取りにくい。
     M.26は重音の後シ♭に飛ぶのが難しい。
     M.30の重音はoptional notesと書いてあり、自分は重音にしていたけど、mpなので無理に重音にしなくても良い気はする。
     M.40-41でト短調の下降音階。M.40はアップからの下降なのでやりにくい。

    当時の演奏:

     

  • バッハ-無伴奏チェロ組曲3番ハ長調BWV1009:ブーレ Bourrees

     2回目のバッハ無伴奏。スズキのヴァイオリンではト長調に移調されて3巻で出てくる。

    ブレーの意味はwikiより:ブレー - Wikipedia

    17世紀舞曲。速いテンポの2拍子の舞曲で、ガヴォットに似ている。

     無伴奏組曲はすべて舞曲でてきており、ブーレも舞曲の一つ。ブーレ1とブーレ2があり、ブーレ2を弾いた後にダ・カーポでブーレ1に戻って終わる。

     久しぶりのバッハ、ハ長調で弾きやすそうと思ったが、ブーレの定義通りテンポをあげようとするとなかなかに難しい。

     M.1-8はテーマ。最初のアウフタクトと2拍子を感じて始める。ずっと1ポジションで弾けるのでここは問題ない。M.5でダウンとアップが3:1になるので弓の使用量に注意。

     M.9から平行調イ短調に。M.13-14のスラー付き移弦が速くなると準備が間に合わなくなりそうだが、慌てないで。M.15の1拍目ド→ミはドで少し時間を取って大丈夫。M.16でイ短調の終止。

     M.17のアウフタクトから空気を変えて元のハ長調に戻る。とにかく移弦が多いので、滑らかにできるように練習。M.19のレ→ファミドも、M.15と同じようにレで少し時間を取る。

     M.21から最後の盛り上がり、ずっと8分音符が続く。3:1のスラーが多いので、弓の使用量に十分気を遣って変な音にならないように。

     M.25-26の上のミファと、1音ずつ下がっていくレ→ドシ→ラソ→ファミは別の声部を弾いている感覚で。特に下がっていく方を出すとかっこいい。


     M.29からブーレ2。同主調ハ短調だが、この♭3つが非常に弾きにくい。A線の開放が使えなくなる、A線とD線の拡張をよく使う、というのが主な理由だと思うが、間違いなくハ短調変ホ長調のスケールを練習した方が弾きやすくなると思う(私は当時やらずに音程が悪いままだった)。スラーはブーレ1と比較して弾きやすいので、ひたすら音程に気をつける。

     M.29-36まで前半。M.34-35は単純な変ホ長調の音階をD線で弾くだけだが、音程が上りも下りも非常に取りにくい。

     M.37から後半。ト短調でラの開放が使えるので少し楽。M.44からまたハ短調に戻る。

     M.49の2音ずつスラーはなにか訴えかけるように。2音では下がっているけど小節全体では上がっていく。

     ちなみにスズキ教本のスラーは編集者がチェロ学習者用に校訂したもので、原典版とはかなり異なる(簡単になっている)ため、最初から原典版で学習したい人、変な癖をつけたくない人はこのスズキは使わないほうがいいと思う(4巻の組曲1番メヌエットも同じ)。
     私は弾きたかったのでスズキ教本で弾いた。

    当時の演奏:

     こちらは音だけ(肝心の音質は悪い):

     

  • ポッパー-ガヴォット op.23-2

     ついにあのポッパー…チェロ奏者のサイトを見ていると必ず出てくるあのいやらしいエチュードop.73を書いたというあの…と思って譜面を見ると、確かにハーモニクスなどは出てくるもののそこまで難しくはない。もちろん技術的難易度はかなり高い気がするが、曲として聴かせるのであれば前のエックレスやバッハの方がずっと難しい気がする。そんなに好きではない。

     曲の情報は少なく、op.23-No.2となっているがop.23の他にどんな曲があるのかもわからない。本気で探せば多分どこかにはあるんだろうけど…。

     曲は3部形式、A-B-AでAはニ長調、Bは同主調ニ短調。冒頭のLivelyとの指示通り、生き生きとした舞曲(ガヴォットなので)。リュリやバッハのガヴォットよりももっとダンサブルな感じがする。


     冒頭からM.8までテーマ。スラースタッカートをはっきり出すのが課題。

     M.8から親指ポジション、嬰ヘ短調に移調。速くなると親指ポジションでトリルを入れるのが難しい。ソ#とミ#が地味に取りにくい。M.18-19の一弓スタッカートは手首でツツツツ…と音を出す練習。最初のダウンで弓先まで持ってくるのを忘れないように。M.22でファ#→ファ#のD線上で2オクターブ跳躍。グリッサンドは極力入れないように(入れたい派なので自戒のため)。

     M.35-36で長いスラー、最後の方でフラジオ+移弦があるので、とにかく弓を節約する。M.34の最後の2音で弓元に持ってくる。M.36でハーモニクス、コマ近くを弾かないと音がでない。M.39-40で35-36の繰り返し。

     M.47からテーマ、今度はffで。弓順も変わっているので注意。M.55から分岐、M.58でまたもや長いスラー。M.62で再度ハーモニクス。うまくあたると気持ちいい。更にM.64ではフラジオレット。弓使ってコマ近くで弾くのはハーモニクスと変わらない。実際に出る音は「ミラミラファ#、ミラミラレ、ラ、レ」

     M.68から一部の終わり(またはD.C.後の曲の終わり)。5度の重音、前半は開放のみ、後半はピアノでスラー。サルタートの指示がある。少しおどけた感じで弾く。ffとpの対比、テヌート・スタッカートとスラーの対比をはっきりと出して。最後はかっこよくpizz。

     M.73からニ短調、mossoは速く。ffで多少荒々しい感じ。M.75-76の重音も開放との重音なので気持ちよく鳴らせる。ffとpの対比を出して。

     M.81から親指ポジションでの重音。低いポジションでは楽に出せていた重音が、親指ポジションだと両方の弦で均等に音を出すことが難しくなる。特に全音符のラの後ソの音を出すことに集中。ソがちゃんと出れば弓の角度が決まるので後は問題ない。個人的にはこのM.81-88がこの曲で一番難しかった。

  • パラディス-シシリアーノ

     7巻最後。シシリアーノは舞曲の一種で6/8か12/8拍子、短調で付点のリズムが特徴。フォーレレスピーギのシシリアーノなど、個人的に好みな曲が多いが、この曲も良い。物憂げにたゆたう感じが共通点だろうか。

     作曲者はパラディスとされているが、ドゥシュキンというヴァイオリニストの偽作とも言われている。真偽は不明。クライスラーも同じようなことをやっていたと思うが、昔の作曲家の曲と言って出したほうが売れた時代があったんだなぁ…。1小節目のド♭であまり昔っぽくない感じはする。

     曲は変ホ長調で♭3つ。苦手な調性だ…。Andantinoでゆったりとした曲調ではあるものの、音程の取りにくさが難易度を上げている。

     構成は二部形式に、最後にテーマが少し繰り返されて終わる。1部の最後にハ短調で終止する以外は変ホ長調のまま。

     シシリアーノは舞曲なので、音程に気を取られて舞曲感を失っては困る。またゆったりした曲なので、装飾音やトリルは入れられるだけ入れるということはしないように(自戒)。


     一部(M.1-10)は最高での4ポジションで、そこまで難しいところもない。しかし音程は合っているはずなのに高かったり低く聴こえたりする。自分だけかもしれないが、とにかく音程。バッハのブーレ2でも書いたが、音階練習が必要だと思う。


     M.12から二部。M.14-15は繰り返しなのでD線で行きたいところだが、結構な高ポジションになるので私はA線のまま演奏した。

     M.16から順に下がるフレーズ。スラーの途中のシフト移動で音がなるべく途切れないようにするのが難しい。シフト移動後の音にアクセントがついている、と先生からの指摘を受けた。

     M.20の肝となるレ♭は当てないと次からの音も全部怪しくなる。(レ♭ドシ♮で全部半音)M.21-22のトリル終わりで上のレ♭に飛ぶのが最難箇所。そこまで時間取れないけど、4から8ポジに飛ぶのが辛い。M.22の最後5ポジに戻るのも音程が合いにくかった。

     M.26から再度テーマ繰り返し。M.29はできるならG線で演奏したほうが、雰囲気は出そうだけど…私はD線で安全策を取った。


     最初から最後まで音程が気になる曲。好きな曲なのでピアノと合わせた動画を作ったが、この時もどんなに練習しても音程が合う気がせず、かなり自信をなくした。今になって思えば練習方法が良くなかったんだなと分かる。いずれまた弾きたい曲の一つ。

    当時の演奏:

     

 7巻を見てきた。本当は7-8巻でまとめたかったが、前回より更に期間が空いてしまい8巻をまとめるには更に時間が必要となるため区切る。